CARS Report

LOTUS 97T/1 Story - Part 2 -

2021.03.29
PLANEX CARSが所有する1985年シーズン用のF1マシン、ロータス97T/1。今回も引き続き、そのヒストリーを紐解きます。


1985年の第3戦サンマリノGPでエリオ・デ・アンジェリスが優勝を飾った1週間後の5月11日、12日にチーム・ロータスはフランス南部のノガロ・サーキットでモナコGPを見据えたテストを行います。ここでも97T/1はセナ、デ・アンジェリスのテストカーとして使われ、2人で合わせて282マイル(125周)ほど走行しています。
さらに5月14日にはフランス・ポールリカール・サーキットでもテストを実施。この時は何かのチェックが必要だったのか、デ・アンジェリスのみが97T/1をドライブし、わずか12マイルのみ走行しています。
そして5月16日から19日にかけて開催された第4戦モナコGPでチーム・ロータスはなんと4台のマシンを用意。デ・アンジェリス用に97T/1をレースカー、97T/3をTカーとして登録。セナ用に97T/2をレースカー、97T/4をTカーとしていました。
木曜の予選1回目、土曜の2回目共にセナがトップタイムを記録する一方で、デ・アンジェリスは木曜に1分23秒319で11位、土曜に1分21秒465を記録し9番グリッドからのスタートとなりました。
今回見つけた資料の中には、モナコGP決勝の97T/1の全ラップチャートなどのデータを記録したレースシートも含まれています。5速ギヤのギヤ比、クラウンホイールピニオンギアのギヤ比、前後サスペンションのトーイン、キャスター角、キャンバー角、車高、ダンパー、前後ウイングのセットなど細かなセッティングデータが書かれたレースシートを見ていると、オープニングラップを6位で通過してから、一時2位にまで上がり、最終的に3位でフィニッシュするまでのラップタイム、順位を争っていたアンドレア・デ・チェザリス、ナイジェル・マンセル、アラン・プロスト、ミケーレ・アルボレートといったライバルとのタイム差が事細かに記録されています。
面白いのはその余白に、フロントブレーキがダメージを負っていること、リヤ左タイヤがレース終盤にブローしていること、一方でエンジンの状態は良好だったことなどレース後の所見が記されていることです。おそらくプロストに次ぐ2位に上がったものの、63周目にアルボレートにかわされ3位に後退したのは、そうした理由によるものなのでしょう。
97T/1に関して残されているレースシートは、これ1枚のみ。というにも97T/1が決勝レースを走行したのはモナコGPのみで、3位入賞が唯一のリザルトとなっているからです。
この後97T/1は、6月のカナダGPでTカーと登録されただのを最後に実戦部隊からは外され、完全なテストカーとして使われることとなります。そのテストの詳細は以下の通りです。
5月21日から23日にポールリカールで行われたテストでセナが552マイル(旧コースを153周!)走行。
6月25日から26日にイギリス・スネッタートン・サーキットデイブ・スコットが撮影のために139マイル走行。
6月27日のイギリス・シルバーストーン・サーキットのテストでデ・アンジェリスが76マイル走行。
7月9日から11日のドイツ・ニュルブルクリンク・サーキットでのテストでセナが325マイル走行。
8月2日から4日のイタリア・モンツァ・サーキットでのテストでデ・アンジェリスが382マイル走行。
8月27日から28日のイギリス・ブランズハッチ・サーキットでのテストでセナが473マイル走行。
11月18日から23日のポールリカールでのテストでセナが259マイル走行。
現在、97T/1には85年仕様のルノーEF15 V6ターボ・エンジンではなく、86年仕様のルノーEF15B、もしくはEF15Cと思われるエンジンが搭載されているのですが、翌年を見据えて11月のポールリカール・テストで使われたものかもしれません。
また、これは個人撮影の動画ですが、ここにブランズハッチでのテストを走る97T/1とセナの姿が、わずかですが残されています。
結局、ロータス97T/1は1985年2月のドニントン・テストから、11月のポールリカール・テストまでチーム・ロータスによって使用され、アイルトン・セナ、エリオ・デ・アンジェリスによって、レース、テストを含み合計4892マイルを走行しました。
その後、ロータスから放出されて個人の手に渡り、1994年にモントレーでのオークションに出品され西田旬良氏が落札。日本で幾度かクラシック・イベントに参加したのちにPLANEX CARS代表の久保田が入手。ルノーEF15ユニットのオーバーホールを含むメンテナンスを行い、レースレディ・コンディションを保って所有し続けています。