すでにスタッフ日記で第一報をお届けしましたが
現在、プラネックスカーズのショールームに非常に珍しいクルマが展示されています。
その名は、LOTUS METIER II。
そう言われても、このクルマの実態をご存知の方はほとんどいらっしゃらないと思います。
ではちょっとだけ、その履歴をお知らせしましょう。
このクルマの元になったのは、今年で生誕50周年を迎えるロータス・エラン。
鋼板製のバックボーンフレームをシャシーにFRP製のボディを被せるという
1990年代までのロータスのクルマ作りの方程式を確立させた名車です。
また、フォードのブロックに自製のツインカムヘッドを載せた、通称“ロータス・ツインカム”は
レースなどにも幅広く利用される名機となり、三菱やトヨタのDOHCエンジン製作の
大いなるお手本にもなりました。
このエランの上級車種として、1963年6月にスタートしたのがM20プロジェクト。
その結果誕生したプロトタイプのひとつが、このMETIER IIなのです。
METIER IIのプロジェクトを指揮したのは、エランの生みの親でもある
デザイナーのロン・ヒックマン。
彼はコーリン・チャップマンが市販車部門を創設したときからの夢であった
最高峰のGTを作るために、エランで培ったバックボーン+FRP+ロータスTCという技術をベースに
M20 (METIER II)の開発を進めます。
このクルマは結局、1967年にロータス・エラン+2として結実するのですが
コックピットの意匠は、のちの生産型とはまったく異なるものとなっています。
63年にデビューした911などに刺激をうけ、2+2でデザインされたMETIER IIですが
ご覧のように、リアシートはおまけ程度のスペースしか確保されていません。
この辺りは、現行のエヴォーラにも通じるところですね。
エンジンは1960年代のロータスの定番ともいえる、1.6リッターのロータス・ツインカム・ユニット。
エランSE用をベースとしたもので、118bhpほどのパワーしかない(当時としては十分以上なのですが)ものの
900kg弱というシャシーには必要にして十分。ご覧のようにコンディションは素晴らしいの一言に尽きます。
フィアット850のテールランプ(生産型ではエランやジャガーEタイプと共通のものに変更)が
流用された特徴的なリアビュー。
この貴重なプロトタイプの前オーナーは、ロータスコレクターとして有名な
Classic Team Lotus のパトロンのひとり、マルコム・リケッツ。
彼の自宅ガレージに大事に保存されていただけあり、コンディションは抜群です。
また、このクルマには膨大なドキュメントのコピーも付属していました。
これは、このクルマのデザイナー、ロン・ヒックマン直筆の書類。
この他にも、当時のロータス社内の機密書類など、素性の確かさを物語る資料が沢山添付されていました。
ちなみに当時、各種テストに供されたMETIER IIは、引退後ロータス役員のカンパニーカーとなり
副社長フレッド・ブッシェルらが使用していたと言われています。
その後、デザイナーのロン・ヒックマン自らが買い取り、暫く彼のアシとして使用していた
こともあるという、ロータス史からみても貴重な1台であるのです。
なお、現オーナーはプラネックスカーズ代表であり、Classic Team Lotus Japan代表でもある久保田克昭。
現在はショールームに展示中ですが、非売品ですので予めご了承ください。
最後に。こちらが1967年から75年にかけて生産された
ロータス・エラン+2。こうして見るとフロントセクションのデザインがMETIER IIと
まるで違うのがよくわかると思います。