CARS Report

LOTUS ESPRIT V8

2011.11.04

今回は、プラネックスカーズに入荷したばかりの超レア車。

1996年式ロータス・エスプリV8をご紹介します。

ブガッティEB110とショールームに並ぶこの姿、歴史を思うとちょっと象徴的ではありますが……。



■ロータス・エスプリV8について

1970年代を代表するロータスの基軸として開発されたロータス・エスプリ。

ジウジアーロの手によるコンセプト”シルバーカー”を踏襲した直線基調のウエッジシェイプは

センセーションを巻き起こし、映画007のボンドカーに使われたのは有名な話。

その後、ロータスの紆余曲折の波に揉まれながれも連綿と作り続けられたエスプリは

1987年にピーター・スティーブンスによるニューデザインのボディを纏って登場したが、

当時のロータスの経営状況は順風とはいえず、エスプリの販売も思わしくない状態が続く。

 

そして1993年。経営危機に陥ったロータスはわずか30万ドルでルクセンブルクにある

ACBNホールディングに売却され、新たな経営者の元で再起を図る事になる。

この新たな経営者こそ、当時EB110を発表し世界にブガッティの再興を高らかに宣言した

新生ブガッティのCEOでもあったロマーノ・アルティオーリ。

 

彼は早速ロータス復活に向けて3つの手を打った。

 

ひとつは、ロータスのアイデンティティを受け継ぐ新たなライトウェイトスポーツの開発。

もうひとつは、次世代のロータスを担うフラッグシップGT&エスプリ後継車の開発であった。

前車はのちにタイプ111エリーゼとして結実するが、残る2つのプロジェクトが遂行される前に

アルティオーリ自身が破産宣告を受け、ロータスはプロトンに売却される。

 

アルティオーリが最後に公の場に姿を見せたのは、ジュネーブショーでのエリーゼ発表の席上

(エリーゼはアルティオーリの孫娘の名前)だったが、彼の投資がロータスを復活させたのは

紛れもない事実である。そしてエリーゼが発表されたジュネーブの会場には

日の目を見なかったGT&エスプリ・プロジェクトのたったひとつの置き土産が展示されていた。

 

それが新開発のオールアルミ製3.5リッターDOHC V8 ツインターボユニットだ。

最高出力355ps/6500r.p.m.、最大トルク40.8kg-m/4000r.p.m.を発揮する

コンパクトかつ軽量なV8は、エスプリに搭載されエスプリV8としてデビューを果たしたのである。

 

しかし、この新型V8が搭載されたのはこのエスプリのみに終わる。

そのエスプリV8も1998年に装備を簡略化したV8 GTを加えるなど、ロータスのフラッグシップとして

生産を継続していくが、販売低迷と旧態化を理由に2004年2月で生産を終了している。

 


 

今回、プラネックスカーズに入荷したのは1996年式のエスプリV8。

EU並行の左ハンドルモデルで、走行はわずか3万4513km。販売価格は498万円。

生産台数も決して多くなく、市場に出る機会はまったくないといっていいエスプリV8。

その歴史的価値を考えると、このコンディションで498万円と言う価格は

ある意味底値といえるかもしれません。

 

 ウッドとレザーに囲まれた英国車らしい室内。

御覧のようにステアリングやインパネの表皮を含めコンディションは素晴らしい状態。

 

V8は当時のフラッグシップで911や355の対抗馬的存在だったこともあり、高級感のある

内装に仕立てられています。ギアボックスは5段M/T。リンケージもしっかりしていて

シフトフィールも小気味よく仕上がっています。

 

 走行距離はわずか3万5000km弱。15年落ちのクルマでこの距離ということからも

非常に大事に扱われていたことが伺えます。

もちろんウッドパネルにヒビなどは見当たりません。

 

 助手席側から覗いたコックピット。

フロントグラスの面積が大きく、スカットルが長いのはエスプリならではの光景。

未だ後継車が登場しないエスプリですが、今見ても新鮮さは変わりません。

 

この個体の特徴は、ボディカラーにコーディネートされたイエローのパイピングが

シートに入れられているところ。

シート自体も使用感こそあれ、極端なヤレやヘタリはありません。

またレザーのアタリも柔らかいので、良好なホールド性を維持しながら

座り心地もいいのが特徴。これなら、ロングツーリングをしても疲れは少ないと思います。

 

希少なコンポジットルーフ付き。狭い室内の換気にも有効。

もちろんガタつきなどもなく、ピシャリと確実に閉まります。ボディが歪んでいない証拠です。

 

 初代エラン以来の伝統となっているバックボーンフレームを利用しているため

若干右にオフセットしたかたちになっているペダルボックス。

しかしながら、ドライビングポジションへの影響は特になく

ペダル類のタッチも自然な好ましいフィーリングになっています。

 

アルフィオーリの指揮下で新世代のロータス・フラッグシップのために

開発が進められたオールアルミ製3.5リッター V8 DOHC ツインターボユニット。

結局、ロータス自体の紆余曲折に飲み込まれ、エスプリに積まれただけで終わってしまった

悲運のエンジンでしたが、コンパクトかつ軽量でレスポンスに優れたこのエンジンは

エスプリを一線級のスポーツカーに舞い戻らせることに成功しました。

 

このV8フィールを味わう唯一のチャンスですよ!

 

ラゲッジルームはエンジンコンパートメントの後半部分に。

容量的には十分なものを確保していますが、やはり熱的な問題は避けられないので

生ものやアイスなどを入れるのには適していないでしょうね。

 

フロントのスペースは、マスターシリンダーなどの補器類とスペアタイヤ、工具などで

埋め尽くされています。

よく御覧になるとわかると思いますが、ブレーキのリザーバータンクや、ウォッシャー液のタンクが

非常に奇麗な状態に保たれているのに注目! このような樹脂部品は管理が悪いと簡単に劣化するので

このクルマのコンディションを図るうえでは、いい指針になると思います。

またスペア工具などは梱包材に包まれたまま、新品状態で残っています。

 

ボディにはヘセルのロータスカーズで貼られたシャシープレート(シール?)が。

ディーラー車ではありませんが、素性は確かです。

 

 

キレイに保たれたテールレンズにV8の誇らしいバッジ。

30年近く製造されたエスプリ一族の最終完成版ともいえるエスプリV8。

その最終型であるV8アニバーサリーでは、丸4灯のテールレンズになりましたが

それ以外のモデルは基本的にこのニューボディ当初のデザインが踏襲されました。

 

ホイールはOZレーシングの5スポークアルミ。

タイヤはフロントに235/40R17、リアに285/35ZR18のBSRE050Aを履きます。

 

ある意味、エリーゼよりも90年代のロータスを象徴する存在と言える

エスプリV8を手に入れる絶好のチャンスです。

 

週末は、アルティオーリの息のかかった2台(エスプリV8、EB110)を御覧に

ぜひショールームまでお越しください!