CARS Report

超レアなロータス・エラン+2のエステート

2022.01.07
皆様あけましておめでとうございます。本年もPLANEX CARSをよろしくお願いします。
さて、年明け最初にお届けするのは、弊社代表の久保田克昭が昨年イギリスを訪れた際に出会った、謎のロータス・エラン+2エステートのお話です。
 


昨年グッドウッド・リバイバルに出場した際に、久保田は HASU RACING 代表のニック・フェネルとともにクラシック・チーム・ロータスの古参メンバーであり、超レアなロータス・コレクターとして知られるマルコム・リケッツのガレージで行われた「ヒストリック・ロータス・レジスター」のクラブミーティングに参加しました。
 
会場にはマルコムのコレクションはもとより、1975年にイギリス・ブリストルのGS ロータス・センターが製作、発売したGSヨーロッパなど貴重なヒストリック・ロータスばかりが集結しました。
そこで久保⽥の⽬に⽌まったのが、このラグーン・ブルーに彩られたエラン+2のエステートだったのです。
エランをベースにしたエステートといえば、数年前に久保⽥がマルコムから購⼊し、今も所有しているエランS4エステートが有名ですが、これはイギリスのロータス・ディーラーであったヘキサゴンが、たった2台だけ製作したスペシャルモデルで、彼らがその後エラン+2をベースにエステートを製作した記録は残っていません。
歴史を紐解くと、エラン+2の開発段階でエステート仕様が検討されたことがありました。デザインをしたのは、エラン、エラン+2の⽣みの親でもあるデザイナーのロン・ヒックマン。ヒックマンは数パターンのデザインを⾏い、実際にクレイモデルまで製作していますが、1967年に役員会によってそのプランは廃案とされました。
ところが、1972年10⽉22⽇にブランズハッチで開催されたF1&F5000 のノンタイトルレース「ジョン・プレイヤー・ビクトリー・レース・ミーティング」で、JPSカラーに塗られたエラン+2エステートが登場。優勝したエマーソン・フィッティパルディを載せ、サーキットをパレードしたことが確認されています。このエステートのベースとなったのは、エラン+2S/130。しかし、今回のクルマとスタイルが異なっているうえ、英国CLUB LOTUSの会報誌によると、誰が何を⽬的に製作したものかなど、⼀切の詳細もわかっていません(もちろん現存も確認できていません)。
その後、1979年にピーター・リッチーがリライアント・シミターのリヤゲートを移植して製作した「リッチー・エステート」、1980年代にCLUB LOTUSのメンバーが製作した「クリサリス・エステート」といったワンオフモデルが個⼈によって作られていますが、いずれもこのクルマとは違うデザインになっています。
ではこのエラン+2エステートは何者なのか?
これはロータス・エンスージァストのロジャー・マクルーフが、ロータスのスペシャルショップとして有名なポール・マティ・スポーツカーズに依頼して2007年に製作したロータス・エストレラ・シューティング・ブレーク(Lotus Estralle Shooting Brake)というワンオフモデルなのです。
1980年代にCLUB LOTUSのミーティングで⾒かけたリッチー・エステートに感化されたというロジャーは、ポール・マティとともに、エラン+2のオリジナルシェイプを残したエステート・ボディをデザイン。製作はノーサンプトンシャーに拠点を置くシェイプクラフト社によって⾏われ、特徴的なサイドクオーターウインドウ、ラウンドしたリヤウインドウなどは特注で作られたといいます。
あわせてインテリアも刷新され、フロントシートは1974年式のエリートのものに変更。フォールディングリアシートは、上質なマグノリアカラーレザーが使⽤されているほか、リヤに2基の12Vソケット、ヒーター付きリヤスクリーンなどの装備も追加されています。
基本的にシャシーはオリジナルと同様ですが、1.6リッターのロータス・ツインカム・ビッグバルブ・ユニットは140bhpへとチューニング。あわせてツインテールマフラーもワンオフのものが装着されているそうです。
ちなみに現在もオーナーはロジャー・マクルーフで、このようなイベント以外でも頻繁に乗っているといいます。
久保⽥と⼀緒に写るマルコム・リケッツ(中央)と HASU RACING  のニック・フェネル(右)。マルコムはかつてグッドウッド・リバイバルのクローヴァー・トロフィーで愛機ロータス32Bを駆り、トップグループを⾛っていた腕前の持ち主。今も久保⽥の所有するエラン・エステート、M20 “Metier II” の前オーナーでもあります。
そしてマルコム・リケッツ・コレクションの番頭であるメカニックのマイク。久保⽥のレーシング・エラン26Rも彼の作品です。
ということで今年も PLANEX CARS では国内外の貴重なクルマ、レアな情報を皆様にご紹介していく予定です。どうぞよろしくお願いします。